訪問するコンサルティング先、特に中小企業において、
必ずと言っていいほど痛感することがあります。
それは、社長や役員の影響力の大きさです。
もちろん、いつも良い影響力が作用していれば理想的なのですが、
実際は、悪い影響のほうが大きいということが多いのです。
しかし、上層部はあまりそれを意識していないようです。
ある社長さんは、自分の柔軟性を売りにしています。
「ひとつの考えに固執せずフレキシブルであるよう心掛けています。
しかし、社員たちがなかなかついてこれないのが問題です。」と、
お会いしてから間もないころにお聞きしました。
その時はそうなのかと思ったのですが、
しばらく協働させていただくと、どうやら少し様子が違うということに気づきました。
確かにこの社長さんには柔軟性があるというところもあるのですが、
どちらかというとコロコロ変わる印象の方が強く、
それが社長の「決定」に対する従業員からの不信につながっていたのです。
わたしたちはコンサルティングプロジェクトを進める中でその事実を発見しました。
どんな次第かというと、
私たちはいつものように現状分析と診断を行い、解決のための戦略を決定し、
段取りやアクションプラン、スケジュールなども決まって、
いよいよプロジェクトが動き出しました。
しかし、いかんせん管理職も含めた社員の方々の動きが非常に遅いのです。
通常であれば2日で済むようなことに2週間もかけたりしています。
とても忙しいのかというと、そんなこともないようです。
管理職や社員に「何か支障となるようなことがありますか?」と尋ねても、
中身のある答えは何も帰ってきません。
そのようなことがしばらく続き、
とうとうプロジェクトが実質的に始動し始めたその時、
社長から突然「ちょっとプロジェクトを変更したい」という連絡が皆に入りました。
プロジェクトの修正や調整というのは進展を見ながら当然起こることなのですが、
まだようやく始まったところなので何だろうと思って会議室に集合し、
社長からのお話を皆でうかがってみると・・・
なんとプロジェクト修正どころの騒ぎではなく、
まるっきり違うものに変更したいというお話でした。
それも、特に必然性があるわけではなく「直観的」にそう思ったとのこと。
多くの方々との討議や検討を重ねて精査しながら決定したプロジェクトですから、
管理職の皆さんはさぞ驚かれているだろうと思って周りを見回してみると、
皆さんそれほどショックを受けているようでもありません。
どうやら驚いているのは、私たちコンサルティングチームの人間だけなようでした。
とても意外な反応でしたので、
会議室を出てから何人かの方々にどう感じたかを尋ねてみると、
「いつものことですよ。うちの社長はああいう人なんです。」
という落ち着き払った答えが口々に返ってきます。
そして、次のように続きました。
「今回は長く持ったほうじゃないですかね。でもどうせ違うことを言い出すんですよ。
だから我々もそれを前提に動くようにしています。」
ここで、どうしてこの会社ではプロジェクトの進行が他社よりも
極めて遅々としていたのか、その理由に合点がいきました。
要するに、「どうせまた変わるだろう」と思っているので、
自分の努力が徒労に終わらないように、なるべく時間をかけて、
社長の気が変わらないか様子を見るようにしていたのです。
つまり、社長の決定に対する信頼度がとても低いということです。
ところが社長にはそんな認識はありません。
ただ社員たちに柔軟性が足りないだけだと思っています。
そして、何とかして社員たちを変えなければと考えていたのです。
「会社が変わらない」と嘆いている社長さんでしたが、
その原因は社長ご自身で作っていたということです。
これでは改革しようとしても、うまくいくわけがありませんね(苦笑)。
どうしてこのような笑い話のようなことが起こってしまうのでしょうか?
ひとつの原因は、日本の中小企業の社長さんの多くが、
『リーダーシップ』ということについて、
ほとんど学んだことがないということにあるのではないかと思います。
雑誌や新聞の記事を目にしたり、
何らかの関連書籍を読んだことはあるかもしれません。
しかし、しっかりと体系的にリーダーシップを理解し、
自分に合ったスタイルを見つけ、その欠点を補完するようにしながら
行動できるようになっている方は非常にまれであるというのが
現状ではないでしょうか?
日本はこれからさらに激動の時代に入っていくと思われます。
全世界的にこれまでのモデルが通用しない『移行期』に入っているからです。
このような時代、特に戦略的な重要性を増すのは、リーダーシップの取り方です。
これは社長一人の問題ではなく、
役員、管理職のすべてのレベルにおいて重要なことです。
リノヴェクスでは、様々なリーダーシップ理論を体系的に理解し、
自分に合ったスタイルを選択できるように支援し、
リーダーシップの実践過程におけるコーチングも提供しています。
ぜひ一度、ご検討ください。
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